「お客さまにとってのデメリットはほとんどありませんが、あえていえば、お客さまがコストを下げるために住宅設備などのグレードを下げようとしてもできない場合があるということでしょう。
たとえば、キッチンのシンクを低価格のタイプに変更しようとした場合、その価格差をトータルコストから単純に引き算するのはむずかしいのです。
なぜなら、当社の場合、広い土地を区切って四~五棟を一度に建てるケースが多く、ロット発注するような設備機器は決まった商材のなかから選択していただかないと、割高になってしまうからです。
この点は一挙に数十や数百も発注する建売住宅やマンションほどのコストダウンはできませんが、お客さまに説明して納得していただいています。
むしろ、デメリットは私たち販売会社にあります。
従来の建売住宅であれば、ある土地を均等に区画し、「金太郎飴」のような住宅を建てればいい。
そのほうが建設会社の生産性は高いはずです。
ところが、Nのサービスではお客さまの要望をできるかぎり考慮しますから、結果的に非効率な要素があります。
極端なことをいえば、一坪の違いによって建物の長さや大きさが変わるので、まったく新たに設計をしなければなりません。
お客さまが要望する広きや予算に応じ、四〇坪の区画もあれば三九坪の区画もあったり、坪数は同じでも土地の形は徴妙に違うので、設計図面の使い回しはできません。
ただし、長い目で見れば、設計図面を改める手聞は全工程で吸収できます。
住宅建設の工程は着工から完成まで四カ月ほどですが、事前の打ち合わせ作業が少し増えるだけなので、それほどのデメリットではありません」すでに住宅用地を所有している人には必要ないが、土地を持たない顧客が住宅を建てる恥ときには、要望するエリアから土地を探し、要望する予算内で要望する広さに区割りして住宅を建てるスペースを創り出し、希望供提し、その広さに応じたプランを提案してくれるNのサービスの存在意義は大きい。
いままで、ありそうでなかった、こうしたサービスがようやく不動産業界にも誕生し、浸透しつつある。
いま、土地探しに苦労している人も、Nのサービスを活用すれば、「望んでいるエリア」 であなたにぴったりの土地が創り出せ、望んだ住宅を手に入れることができるかもしれない。
住宅用地を必死に探している顧客がいる一方、土地を売りたいという地主がいる。
両者の要望を合致させるところに、不動産ビジネスの醍醐味がある。
H氏がこのサービスを発想した原点について語ってくれた。
当時、H氏は三十代前半。
一九九〇年代半ばのころのことである。
「不動産の仲介会社で営業を担当していた私は、ある地主の方に『この土地を売ってください』と頼まれました。
いびつな形の広い土地なので、私のお客さまのなかには、予算面で買える人はいないし、変形の土地は区割りがむずかしい。
変形の場合、一括で売るのが不動産業界の常識でしたから、これは無理だなと思っていました。
ところが、このエリアで住宅用地を探していたお客さまが二人いまして、それぞれのお客さまの要望に合った土地を探していたのですが、なかなか見つかりませんでした。
お客さまからは『早く探してほしい』という問い合わせがくる。
そこで、二人のお客さまに、この広い土地を紹介しようとひらめいたのです。
本来、こういう売り方はすべきではないのですが、二人のお客さまを引き合わせ、変形の土地を二つに区割りし、『共同購入しませんか』と提案したのです。
この二人がチームを組んで購入すれば、この広い土地を売買できると思い、二人のお客さま、さらに売主さんそれぞれと交渉しました」相続した土地を早く売却したい売主に対し、H氏は、広い変形の土地なので一括購入する人はいないことを伝え、「二人のお客さまが共同購入するかもしれない」と話した。
その後、交渉を続けていくなかで、ついに二人の顧客と売主との三者面談にまでたどりついた。
「三者への連絡や、面倒な手続きはすべて私がやりますという条件で、このように区画割りし、この価格でどうか、とそれぞれに提案しました。
実は、はじめは三者とも半信半疑でしたが、何度か話をしていくなかで、一人のお客さまから『この土地を買います』という返答をもらいました。
残りの土地はどうか…、もう一人のお客さまが『ノー』といえば、この交渉は成立しない状況です。
そこで、売れないことも想定し、保険としてある企業にこの土地を紹介して買値を提示してもらいました。
そこで提示された価格は売主が当初希望していた価格よりも低かったのですが、必ず買うという企業が登場したことで売主さんに安心してもらいました」だが結局は、二人の顧客が同時に購入するということで成約にいたった。
二人の顧客も売主も、とても喜んでくれたという。
「このときの体験がNのビジネスの原点です。
一人では買えない土地でも、二人のお客さまが納得するように区割りすれば売れる。
いびつな土地から素晴らしい土地を創り出したわけです。
ただし、一対一の通常の仲介と異なり、大変な労力と時聞がかかりました。
当時の同僚からは、そんなパズルのような仕事は非効率的だという意見もありましたが、私は逆に、誰もやりたがらないからこそビジネスになるのではと考えました。
お客さまや売主にとってハッピーであれば会社にもプラスですからね」H氏は、この新ビジネスの提案を数人の不動産会社の経営者に話した。
しかし、彼らは乗ってこなかった。
複雑で面倒な仕事を事業化するのはむずかしいと感じたからだろうが、この反応を見て、H氏は「これを事業化してみたら…」という思いが湧き上がってきた。
旧来の常識にこだわる不動産会社の経営者は興味を示さなかったが、だからこそここに新ビジネスの種があるとH氏は直感したのである。
面倒で効率の悪い作業だが、人がやるから時聞がかかるのであって、コンピュータにやらせればいいのではないか。
しっかりとしたシステムをつくり、それをカスタマイズする仕組みを構築すれば、より簡単にできるはずだ。
たしかに、不動産業界では業歴の長いデベロッパーが経験や勘による基準で土地を購入・分譲し、住宅用地として売り出している。
顧客は事前に区画割りきれた土地を選ぶしかない。
つまり、顧客の要望が反映されない、不動産会社からの一方的な流通構造が定着しているのだ。
「不動産業界のビジネスの考え方はプロダクト・アウト(企業側からの一方的な提供)なのです。
これでは、これから住宅を購入しようという顧客の要望には応えられません。
そこで私たちは、発想を転換して、マーケット・イン(顧客の要望にもとづく提供)を実践し、顧客の望みに応じて土地を創り出し、顧客の好みに適した住空間を提供すれば、必ず支持されるはずだと思ったのです」顧客の視点に立つマーケット・インの手法は、ほかの業種ではすでに当たり前のものとなっており、多くの企業が実践している。
ところが、不動産業界では供給側主導のプロダクト・アウト的な慣習が依然として残っている。
住宅用地の仕入仲介会社も、土地の売主からの「売りたい」という依頼を受けてそのまま売却するというプロダクト・アウト型の思考から抜け出せてはいない。
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